ゲームオブスローンズを語るブログ

漢の中の漢 エダード・スタークが守り抜いたジョン・スノウの秘密とリアナ・スタークとの約束

time 2019/02/20

漢の中の漢 エダード・スタークが守り抜いたジョン・スノウの秘密とリアナ・スタークとの約束

エダード・スタークはゲームオブスローンズのシーズン1における主人公ですが、ここではジョン・スノウの出生の秘密とエダード・スタークの漢気について書いていきます。

ゲームオブスローンズの根幹にかかわるネタバレを含みますから、まだ観てないかたはバックしていただくか、シーズン6の最期まで観てから読んでください。


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敗者の子にやたら優しいエダード・スターク

エダード・スタークは敗者の子にやさしいです。

シオン・グレイジョイは、ベイロン・グレイジョイの末子で、ベイロン・グレイジョイ反乱後にエダード・スタークが人質として養育します。

敗者の子として殺せばよかったものの、シオン・グレイジョイの後見人として育て上げます。

もしかすると、シオン・グレイジョイをエダード・スタークが預かっていたことにより、ベイロン・グレイジョイの更なる反乱を防げた、という見方も可能かもしれません。ベイロン・グレイジョイが息子は既に死んだと発言し、娘のヤーラ・グレイジョイを後継者にしていますが、末息子シオン・グレイジョイの帰還を待ってから戦を起こしているので、一定の抑止力にはなったようです。

野人に捕まったブラン・スタークを弓矢で救ったものの、スタークにもグレイジョイにも成れないシオンの葛藤、シオン・グレイジョイによるウィンターフェル奪取、サンサ・スタークの救出を考えると、エダード・スタークの温情が吉と出たのか凶と出たのか、一概には言えません。

ターガリエン家の遺児の殺害に断固として反対するエダード・スターク

ロバート・バラシオン王は、前王朝ターガリエン家の遺児であるヴィセーリス・ターガリエンとデナーリス・ターガリエンの動向を気にしており、度々殺害を考えますが、そのたびにエダード・スタークは感情的になって大反対します。

小評議会で反対した時は、「私の知っているロバート・バラシオンは、赤子の影に怯えたりしない!」と啖呵を切って、デナーリス・ターガリエン暗殺を決断したロバート・バラシオン1世に抗議し、王の手を辞任さえしています。

ロバート・バラシオン王によるデナーリス・ターガリエン暗殺指示は失敗に終わり、ドスラク族のカール・ドロゴにウェスタロス侵攻を決意させましたし、デナーリス・ターガリエンを成長(逃げ続けることができず、戦うしかない)させることにもなりました。

エダード・スタークの考えでは、歯向かってくるなら叩き潰すまでだ。(=歯向かってこないなら殺す必要はない)というスタンスです。

ターガリエン家の遺児殺しにあれだけ感情的に反対する裏には、ジョン・スノウの存在があります。

妹リアナ・ターガリエンとの約束

ロバートの反乱の最後に、ドーンの喜びの塔にて、エダード・スタークは死の床にあった妹リアナ・スタークを見つけ出し、一つの約束をします。

王子レイガー・ターガリエンとリアナ・スタークとの間の、生まれたばかりの子、エイゴンを守ること。

守る、と言っても、王位についたロバート・バラシオンのターガリエン家に対する怒りは尋常ではなく、感情の点でも、新王朝の統治政策の点でも、レイガー・ターガリエンの血を引くエイゴンは絶対に殺されてしまう。

また、ロバートの反乱の原因がリアナ・スタークと王子エイガー・ターガリエンの恋によるものだったなど言えるべくもなく、エダード・スタークはエイゴンを守るために、エイゴンの出生を秘密とし、エイゴンを自分の落とし子ジョン・スノウとして、自分の庇護のもとで育てることを決意します。

堅物・義の塊エダード・スタークに名誉を忘れさせた女ウィラ

エダード・スタークは謹直で、名誉を重んじる堅物だと知られていましたが、そんなエダード・スタークに名誉を忘れさせた平民の女ウィラが、ジョン・スノウの母親だ、という説が広がります。

エダード・スタークにはほかに落とし子もいなければ愛人もいません。

娼館に招待したピーター・ベイリッシュを危うく絞め殺そうとするくらい、堅物です。

ジェイミー・ラニスターも「義の塊のような男」と評していますし、兄弟のように育った親友ロバート・バラシオン1世も、エダード・スタークに名誉を忘れさせた女はいったいどんな女なんだと興味津々です。

普段から女にだらしなかったのならともかく、堅物が落とし子を作るのですから、奥方キャトリン・タリーの傷つきようは尋常ではなかったでしょう。

奥方キャトリン・タリーに対しても秘密を守り抜く「冬来(きた)る」

エダード・スタークはだれにもジョン・スノウの出生の秘密を告げませんでした。

奥方キャトリン・タリーに対しても、ジョン・スノウは自分の落とし子であり、ウィンターフェルで育てる、と言います。

キャトリン・タリーにしてみたら、婚約者ブランドン・スターク(エダードの兄)が狂王エイリス・ターガリエン2世に処刑され、エダード・スタークと結婚し妊娠したあとに夫エダード・スタークと父ホスター・タリー、ロバート・バラシオン、ジョン・アリンが王国に対して反乱を起こし、ようやく1年後に帰ってきたと思ったら、別の女に産ませた赤子を連れてきてここで育てる、と告げられる。

たまったものではないでしょう。

ジェイミー・ラニスターは、「ジョン・スノウを見るたび、あの義の塊のようなエダード・スタークがほかの女と寝たことを思わざるを得ないだろう」と言っていましたが、まさにその通りです。

ゲームオブスローンズの劇中でも、キャトリン・タリーのジョン・スノウに対する対応は最悪ですし、虐げられています。エダード・スタークに対しても、恨み言を言います。きっと19年間ずっとネチネチと言ってきたことでしょう。

そのたびに、エダード・スタークは「耐えるんだ。冬来(きた)る、だ。」

と封じます。初見では、理不尽さに耐えるようキャトリン・タリーに強要しているように見えますが、理不尽さに耐えているのは他ならぬエダード・スタークだったのです。(本当は妻一筋なのに、不倫をネチネチ19年間も言われ続ける。しかも真実を言うことはできない)

妻と言えど、夫を殺すのがゲームオブスローンズの世界ですから、キャトリン・タリーにも言わなかったのでしょう。秘密は言った瞬間に秘密ではなくなり、ジョン・スノウの身も危うくなります。

妻からの恨み言はただでさえ堪えるのに、それが濡れ衣で、しかもそれに弁明できないのだとしたら、もう「冬来(きた)る」と言うしかないですね。

ジョン・スノウの壁行きを認めたエダード・スターク

エダード・スタークが王の手に任じられて、キングズランディング行きが決まった段階で、ジョン・スノウの壁行き(ナイツウォッチになること)の申し出を認めます。

エダード・スタークいないウィンターフェルよりも、壁の方が安全かもしれません。(実際はホワイトウォーカーによって危険になっているのだが)

ナイツウォッチになれば、王権も通用しないため、万一ジョン・スノウの正体が露見してもロバート・バラシオン王は法的には手を出すことができません。

ロバート・バラシオンの死後や、何らかのタイミングで公表や恩赦の可能性も残ります。

壁を守るナイツウォッチには、エダード・スタークの弟ベンジェン・スターク(ジョン・スノウにとっては叔父)もいますし、ナイツウォッチ総帥はベア・アイランドのジオ―・モーモント(モーモント家はスターク家の旗手)なので、ジョン・スノウが壁でナイツウォッチになることは安全策でした。

ジョン・スノウ自身は、体よく捨てられた気になりますが、合理的な措置です。

ジョン・スノウの問いに「お前もスタークだ」と答える

エダード・スタークは、ジョン・スノウとの別れ際に、

「ナイツウォッチになることは名誉だ。」

「我々スタークは大昔から壁を見張ってきた。」

「お前もスタークだ。その名はなくても、血は流れている。」

という言葉をかけます。

それに対して、ジョン・スノウは

「母は生きていますか」

「母は私の行方を知っていますか。気に掛けますか」

と問います。

落とし子であるジョン・スノウは、母親が誰なのか、生きているのか死んでいるのかも分かりません。自分のことを気にかけてくれているのかどうか、も。

もちろん、それを知っている唯一の人間は、父であるエダード・スタークしかいません。

しかし、父エダード・スタークはそれに答えることなく、

「今度会ったら話そう」

と濁して、2人は別れます。

言えないですよね。

シオン・グレイジョイやターガリエン家の遺児に温情をかける理由

エダード・スターク本来の人間性もあるでしょうが、敗者の子供を助けるというのは、エダード・スタークの一貫したスタンスです。

反乱を起こしたベイロン・グレイジョイの末子、シオン・グレイジョイを養育し、ロバート・バラシオンによるヴィセーリス・ターガリエンとデナーリス・ターガリエンの暗殺に大反対し、サーセイ・ラニスターに対してでさえ、子供たちを手にかけたくない、とキングズランディングから逃げる時間を与えてしまう(そのため形勢逆転し自らの死につながる)

すべては、ジョン・スノウを守ること(妹リアナ・スタークとの約束を守ること)と繋がっています。

これでデナーリス・ターガリエンの暗殺に賛成していたら、一貫性のない人間になります。

ロバート・バラシオンは、ターガリエン家の抹殺に固執しますが、今わの際には、「デナーリス・ターガリエンの暗殺を決めたことは失敗だった。ネッド(エダード・スタークのこと)、お前が正しい。」と言います。

その後すぐにロバート・バラシオンは死んでしまいますが、もう少し長生きしていれば、ジョン・スノウの恩赦もあり得たかもしれません。

エダード・スタークは宮廷人としてはとても生ぬるいですが、漢の中の漢です。

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